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text:isoho:ko_isoho2-17

伊曾保物語

中巻 第17 獅子王と驢馬の事

校訂本文

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ある獅子王(ししわう)、通りける所を、驢馬(ろば)これを嘲(あざけ)る。獅子王、このよしを聞きて、「あつぱれ、食ひ殺してんや」と怒りけるが、「しばし」とてゆるす心出で来ける。そのゆゑは、「われと等しき者にもあらば、その争ひも及び侍るべけれども、かれらがごとく宿世(すくせ)つたなき者に、あたら口を汚(けが)さんもさすがなれば」とてゆるし侍りき。

そのごとく、「無智の輩(ともがら)に向かつて是非(ぜひ)を論ずべからず」といへる心なるべし。驢馬とは無知の輩を指すべし。獅子王とは才知の儀しかる者を喩ふるなり。

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翻刻

  十   ししわうとろはの事
ある師子王とをりける所をろは是をあさけるしし
わう此由をききてあつはれくいころしてんやとい
かりけるかしはしとてゆるす心出来けるそのゆへ
はわれとひとしきものにもあらは其あらそひもお
よひ侍るへけれ共かれらかことくすくせつたなき
ものにあたら口をけかさんもさすかなれはとてゆ
るし侍りき其ことく無智の輩にむかつて是非を/2-53l

https://dl.ndl.go.jp/pid/2532142/1/53

論すへからすといへる心なるへしろはとは無知の
輩をさすへしししわうとは才知儀しかる者をた
とふるなり/2-54r

https://dl.ndl.go.jp/pid/2532142/1/54

text/isoho/ko_isoho2-17.txt · 最終更新: by Satoshi Nakagawa