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text:isoho:ko_isoho2-13

伊曾保物語

中巻 第13 犬と肉(ししむら)の事

校訂本文

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ある犬、肉(ししむら)をくはへて川を渡る。真ん中ほどにて、その影水に映りて大きに見えければ、「わがくはゆる所の肉より大きなる」と心得て、これを捨ててかれを取らんとす。かるがゆゑに、二つながらこれを失なふ。

そのごとく、重欲心()の輩(ともがら)は、他の財(たから)をうらやみ、ことにふれてむさぶるほどに、たちまち天罰をかうむる。わが持つところの財をも失なふことありけり。

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  十三   いぬとししむらの事
あるいぬししむらをくはへて河をわたるまんなか
ほとにてそのかけ水にうつりて大きにみえけれは
わかくはゆる所のししむらより大きなると心えて
これをすててかれをとらんとすかるかゆへにふた
つなから是をうしなふそのことくちうよくしんの
ともからは他のたからをうらやみことにふれてむ
さふる程にたちまち天罰をかうむるわかもつ所の
たからをもうしなう事ありけり/2-51r

https://dl.ndl.go.jp/pid/2532142/1/51

text/isoho/ko_isoho2-13.txt · 最終更新: by Satoshi Nakagawa