text:isoho:ko_isoho2-10
中巻 第10 イソポ、物の喩へを引きける条々
校訂本文
1)つらつら人間のありさまを案ずるに、色にめで香に染めけることをもととして、よき道を知ることなし。されば、この巻物(まきもの)を2)一本の植木には、必ず花実あり。花は色香(いろか)をあらはす物なり。実はその誠(まこと)をあらはせり。
されば庭鳥(にはとり)になぞらへて、かのことを知るべし。庭鳥、塵芥(ちりあくた)にうづもれて、餌食(ゑじき)を求むる所に、いとめでたき玉(たま)をかき出だせり。庭鳥、かつてこれを用ゐず、踏みのけて、おのれが餌食を求む。
そのごとく、あやめも知らぬ人には、ただ庭鳥に異ならず。玉のごとくなるよき道をば少しも用ゐず、芥(あくた)なる色香に染みて、一生を暮らすものなりとぞ見え侍りける。
翻刻
十 いそほ物のたとへをひきける事 つらつら人間のありさまをあんするに色にめて 香にそめける事をもととしてよき道をしること/2-48l
https://dl.ndl.go.jp/pid/2532142/1/48
なしされはこのまき物を一本のうへ木には必花実 あり花は色香をあらはす物なり実はその誠をあら はせりされは庭鳥になそらへてかのことをしる へし庭鳥ちりあくたにうつもれてゑしきをもと むる所にいとめてたき玉をかきいたせり庭とりか つてこれをもちいすふみのけてをのれかえしきを もとむそのことくあやめもしらぬひとにはたた庭 とりにことならすたまのことくなるよき道をは すこしも用すあくたなる色かにそみて一生をくら すものなりとそみえ侍りける/2-49r
text/isoho/ko_isoho2-10.txt · 最終更新: by Satoshi Nakagawa