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text:isoho:ko_isoho1-17

伊曾保物語

上巻 第17 イソポ、諸国を廻る事

校訂本文

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さるほどに、イソポはそれより諸国を廻り歩(ある)きけるに、バビラウニヤの国リクルスと申す帝王、これを愛し給ふことかぎりなし。国王のもてなし給ふ上は、百官・卿相(けいしやう)を始めとして、あやしの者に至るまでも、これをもてなすことかぎりなし。

そのころの習ひとして、余(よ)の国の帝王より、種々の不審(ふしん)をかけあはせ給ふに、もしその不審を開かせ給はねば、その返報(へんぽう)に俸禄(ほうろく)を奉る。しかのみならず、不審を開かせ給はぬ帝王をば、ひとへにその臣下のごとし。これによつて、諸国の不審まちまちなり。

しかるに、バビラウニヤの帝王へかけさせ給ふ不審、開かせ給はぬことなし。これひとへにイソポが才覚とぞ見えける。また、バビラウニヤより余の国へかけ給ふ不審は、イソポがかけ給ふ不審なれば、一つも開かせ給ふ国王なし。その返報として、あまたの財宝を取らせ給ふ。その恵みによりて、イソポもめでたく栄えけることかぎりなし。

才智はこれ朽ちせぬ財(たから)とぞ見えける。

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  十七   いそほ諸国をめくる事
去程にいそほはそれより諸国をめくりあるきける
にはひらうにやの国りくるすと申帝王これを愛
し給ふ事かきりなしこく王のもてなし給ふうへ
は百官けいしやうを始としてあやしのものにいた
るまてもこれをもてなす事かきりなしその比の
ならひとして余のくにの帝王より種々のふしんを/1-27l

https://dl.ndl.go.jp/pid/2532142/1/27

かけあはせ給ふにもしそのふしんをひらかせたま
はねは其返報にほうろくを奉るしかのみならす
ふしんをひらかせ給はぬていわうをはひとへにそ
のしんかのことしこれによつてしよこくのふしむ
まちまちなり然にはひらうにやのていわうへかけ
させ給ふふしむひらかせ給はぬ事なし是ひと
へにいそ保か才覚とそみえける又はひらうにや
よりよのくにへかけ給ふふしむはい曾保かかけ
給ふふしむなれはひとつもひらかせ給ふこくわう
なしその返報としてあまたのさいほうをとらせ給
そのめくみによりていそほもめてたくさかへける/1-28r
事限なし才智は是くちせぬたからとそみえける/1-28l

https://dl.ndl.go.jp/pid/2532142/1/28

text/isoho/ko_isoho1-17.txt · 最終更新: 2025/03/11 12:14 by Satoshi Nakagawa