rhizome:閑居友
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閑居友
かんきょのとも
概要
『閑居友』第一話後半部分
さても、発心集には伝記の中にある人々あまた見え侍るめれど、この書には、伝に載れる人をば入るることなし。かつはかたがた憚りも侍り。また、世の中の人のならひは、わづかにおのれが狭く浅くものを見たるままに、「これはそれがしが記せるものの中にありし事ぞかし」など、よにもたやすげにいふ人もあるべし。また、もとより筆をとりてものを記せる者の心ざしは、「我この事を記しとどめずは、後の世の人いかでかこれを知るべき」と思ふより始まれるわざなるべし。さればこそ、章安大師は「この事もし墜ちなば、将来も悲しむべし」とは書き給ふらめ。いはんやまた、古き人の心も巧みに言葉もととのほりて記せらんを、今あやしげに引きなしたらむもいかがと覚え侍り。
また、この書き記せる奥どもに、いささか天竺・震旦・日域の昔の後をひと筆など引き合はせたる事の侍るは、「これを端にて知り初むる縁ともやなり侍らん」など思ひ給ひて、つかうまつれる也。
長明は、人の心をも喜ばしめ、また結縁にもせむとてこそ、伝の中の人をも載せけんを、世の人のさやうには思はで侍るにならひて、かやうにも思ひ侍るなるべし。ゆめゆめ草隠れなきかげにも、「我をそばむる詞かな」とは思ふまじきなり。
諸本
『閑居の友』の伝本は三種に分けることができ、甲類の誤綴による本文の差異から、甲類から乙類、丙類が発生したと考えられている。
また、甲類のなかでも、書陵部本と岩瀬文庫本は伝為相本の転写本と考えられ、書写年代の古さと、本文の正確さから伝為相本が最善本とされる。
甲類
- 伝為相本 尊経閣蔵
- 宮内庁書陵部本
- 岩瀬文庫本
- 松平文庫本 島原市立公民館蔵
乙類
- 神宮文庫本
- 木板刊本
- 寛文二年板
- 刊年不明の本
- 無刊記本
- 青蓮院板
- 続群書類従本
丙類
- 譚玄本(一) 尊経閣蔵
- 譚玄本(二) 吉田幸一蔵
参考文献
注釈書
rhizome/閑居友.1432643561.txt.gz · 最終更新: 2015/05/26 21:32 by Satoshi Nakagawa