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text:zotanshu:zotan04-07

雑談集

巻4第7話(30) 無明法性同体の事

校訂本文

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譬へば、昔、人の親、遠き国にありて、大事の病(やまひ)して、すでに死なんとするよしを、二人の子の、別々に居たるがもとへ告げたるに、聞きあへず行きけるに、日暮れて道見えずなりて、怖しかりければ、塚穴(つかあな)のありけるに入りにけり。

かかるほどに、いま一人の子が、またこのの塚穴に入りけるを、もと入りたる子は、「鬼(き)の食(かて)に来たる」と思ひ、今入りたる子は、「鬼の食らはむ」と思ひて、「塚の内にありける」と思ひて、互ひに「食らはれじ」と、夜もすがらからかふほどに、夜明けて見れば、わが兄弟(あにおとと)なり。

かくのごとく、無明の鬼なりと思へども、菩提の暁(あかつき)になりぬれば、真如(しんによ)・実相(じつさう)一つなり。かるがゆゑに、無明の夜晴るる思ふべきなり。

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  無明法性同体事
譬ヘハ昔人ノヲヤトヲキ国ニアリテ大事ノ病シテステニ死ントスルヨシヲ
二人ノ子ノ別々ニ居タルカ本ヘ告タルニキキアヘス行ケルニ日クレテ
道ミエスナリテ怖シカリケレハツカアナノアリケルニ入リニケリカカル/2-35l

https://dl.ndl.go.jp/pid/13384727/1/35

程ニイマ一人ノ子カ又此ノツカアナニイリケルヲ本イリタル子ハ鬼ノ
食ニ来ルト思ヒイマ入リタル子ハ鬼ノクラハムト思テツカノ内ニアリ
ケルト思テタカヒニクラハレジトヨモスカラカラカウホトニ夜アケ
テ見レハワカ兄ニ弟トナリ如此ノ無明ノ鬼ナリト思ヘトモ菩提ノ
アカツキニナリヌレハ真如実相一ツ也故ニ無明ノ夜晴ルル可キ思也/2-36r

https://dl.ndl.go.jp/pid/13384727/1/36

text/zotanshu/zotan04-07.txt · 最終更新: by Satoshi Nakagawa