text:zotanshu:zotan01-04
巻1第4話(4) 中国辺地上代末世の事
校訂本文
三世は仮法なり。心は不相応(ふさうおう)行の随一なり。国界また空華(くうげ)のごとし。円覚経に云はく、「諸仏の国土は空華のごとく、乱起乱滅す」。いはんや凡界の国をや。実(まこと)には、またみな寂光なり。天竺・唐国・日本、寂光を出でず。また同こく幻化(げんけ)の国なり。
三世また夢中の仮法なり。舎衛(しやゑ)1)に九億の家あり。三億は、見仏聞法(けんぶつもんほふ)して機に随ひて益を得。われら彼に及ばず。三億は、聞きて参詣せず、三億は聞かず知らず。
われら六億には勝(すぐ)れたり。一城の中(うち)遠しといへども、われら何ぞ参詣せざらん。遠国(をんごく)に生まれながら、遺像(ゆいざう)の大仏を礼し生身(しやうじん)のごとくに思ひて、善光寺へ参ぜり。かの三億、聞きて参らざる意ならば、必ずしも教えのごとく行学のことあるべからず。
われら随分如説(ずいぶんによせつ)の行儀、その志休息無し。しかればすなはち、辺国の恨み、滅後の愁へ、これを忘る。随分に学行すべし。識蔵(しきざう)に薫(くん)じぬれば、生(しやう)を経(ふ)といへども、善悪の習ひ朽つべからず。ただ光陰を惜しみ、世縁を棄て、大乗の行道、畢命(ひつみやう)の時を期し、これを励ましこれを勤む。是れ生死(しやうじ)の中(うち)の小分解脱、長眠(ちやうめん)の内、暫時(ざんじ)の覚悟なり。
翻刻
中国辺地上代末世ノ事/1-11r
三世ハ仮法ナリ也心ハ不相応行ノ随一也国界亦如シ空華ノ円覚 経云諸仏ノ国土ハ如空華ノ乱起乱滅ス況ヤ凡界ノ国ヲヤ哉実ニハ亦タ 皆寂光也天竺唐国日本不出寂光亦同ク幻化ノ国也 三世亦夢中ノ仮法也舎衛ニ有九億ノ家三億ハ見仏聞法シテ随 機得益ヲ我等不及彼三億ハ聞テ不参詣セ三億ハ不聞カ不知ラ 我等六億ニハ勝タリ一城ノ中雖遠シト我等何ンソ不ラン参詣セ遠国ニ 生レナカラ遺像ノ大仏ヲ礼シ生身ノ如クニ思テ善光寺ヘ参セリ 彼ノ三億聞テ而不ル参意ナラハ必シモ如教ノ行学ノ事不可有ル我 等随分如説ノ行儀其ノ志無休息然ハ則チ辺国ノ恨ミ滅後ノ 愁忘之随分ニ可学行ス識蔵ニ薫ジヌレハ雖経生ヲ善悪ノ習 不可朽ツ只惜光陰ヲ棄テ世縁大乗ノ行道期畢命ノ時ヲ励マシ之ヲ勤ム 之ヲ是レ生死ノ中ノ小分解脱長眠ノ之内チ暫時ノ覚悟ナリ也/1-11l
1)
舎衛国
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