text:tosanikki:se_tosa36
1月27日 不明
校訂本文
二十七日、風吹き波荒ければ、船出ださず。これかれかしこく歎く。男たちの心なぐさめに、漢詩(からうた)に、「日を望めば都遠し1)」などいふなることのさまを聞きて、ある女の詠める歌、
日をだにも天雲(あまくも)近く見るものを都へと思ふ道のはるけさ
また、ある人の詠める
吹く風の絶えぬかぎりし立ち来れば波路(なみぢ)はいとどはるけかりけり
日一日(ひひとひ)風やまず。爪弾(つまはじ)きして寝ぬ。
翻刻
廿七日かせふきなみあらけれはふね いたさすこれかれかしこくなけく をとこたちのこころなくさめに からうたに日をのそめはみやこ とほしなといふなることのさまを/kd-33r
ききてあるをんなのよめるうた ひをたにもあまくもちかくみる ものをみやこへとおもふみちのはる けさまたあるひとのよめる ふく かせのたへぬかきりしたちくれは なみちはいととはるけかりけりひひ とひかせやますつまはしきして ねぬ/kd-33l
1)
李白『李太白詩集』。『晋書』の故事による。『唐鏡』6-14参照。
text/tosanikki/se_tosa36.txt · 最終更新: 2023/09/23 16:59 by Satoshi Nakagawa