text:takamura:s_takamura1-08
1-8 されどいかでか入りけむこの妹の寝たる所へ入りにけり・・・
校訂本文
されど、いかでか入りけむ、この妹(いもうと)の寝たる所へ入りにけり。いと忍びて、まだ夜深く出でにけり。たまさかに入りは入りたりけれど、逢ふことはかたかりけり。常に向かひにければ、夜は逢はず。なかなかに心は空(そら)にて、「いかにせむ」と思ひ歎きて、
うちとけぬものゆゑ夢を見て覚めて1)飽かぬもの思ふころにもあるかな
返し、
いを寝ずば夢にも見えじを逢ふことの歎く歎くもあかし果てしを
翻刻
ひさしくもかたらはすありされ といかてかいりけむこのいもうとの ねたる所へ入にけりいとしのひて また夜ふかくいてにけりたまさかに いりは入たりけれとあふことはかた かりけりつねにむかひにけれは よるはあはす中々に心はそらにて いかにせむと思なけきて うちとけぬ物ゆへゆめをみてあかぬ/s15r
ものおもふころにもあるかな 返し ゐをねすは夢にもみえしをあふことの なけくなけくもあかしはてしを/s15l
1)
底本「覚めて」なし。諸本により補う。
text/takamura/s_takamura1-08.txt · 最終更新: 2022/08/29 01:46 by Satoshi Nakagawa