text:takamura:s_takamura1-07
1-7 例の書読みて内侍になさんの心ありて親は書を教ふるなりけり・・・
校訂本文
例の書(ふみ)読みて、「内侍(ないし)になさん」の心ありて、親は書を教ふるなりけり。文(ふみ)通はしにはしらたれど、この兄(せうと)、心を惑はして思ひ出でられけり。男言ふやう、「かく思ひ出でられ、限りなき心を思ひ1)知らずして、よそなる人を思ひ給へるこそつらけれ。
目に近く見るかひもなく思へども心をほかにやらばつらしな」
と言ひければ、「人の御心も知らずや。
あはれとは君ばかりをぞ思ふらむやるかたもなき心とを知れ
おもくの2)なや」と言ひければ、少し心ゆきて、
いとどしく君の歎きのこがるればあらぬ思ひも燃えまさりけり
かく言ひて、心は通ひけれど、親にもつつみ、人にもさはりければ、心解けて久しくも語らはずあり。
翻刻
けりれいのふみよみてないしに なさんの心ありておやはふみをを しふるなりけりふみかよはしには しらたれとこのせうと心をまと はしておもひいてられけりおとこ いふやうかくおもひいてられかきり なき心をしひしらすしてよそなる 人をおもひたまへるこそつらけれ/s14r
めにちかく見るかひもなくおもへとも 心をほかにやらはつらしなといひ けれは人の御心もしらすや あはれとは君はかりをそおもふらむ やるかたもなき心とをしれ おもくの(不審)なやといひけれはすこし 心ゆきて いととしく君のなけきのこかるれは あらぬおもひももへまさりけり かくいひて心はかよひけれとおやにも/s14l
https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100002868/viewer/14
つつみ人にもさはりけれは心とけて ひさしくもかたらはすありされ/s15r
text/takamura/s_takamura1-07.txt · 最終更新: 2022/08/29 01:40 by Satoshi Nakagawa