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醒睡笑 巻8 祝ひすました
10 もの祝ひする商人ありて初春の朝ごと昆布搗ち栗など・・・
校訂本文
もの祝ひする商人ありて、初春の朝ごと、昆布(こぶ)・搗(か)ち栗など、菓子を入れてすわる染付けの鉢あり。宵より妻の取り出だし、下主(げす)に渡し、「きれいに濯(すす)ぎて開けよ」と言ふに、何とかしけむ、取り落してうち割りぬ。女房、肝をつぶしあへり。
明けぬれば、「いつもの茶の子出づるや」と亭主待てども、さらに出でず。そのまま気色(きしよく)をそこなひ、女房を叱る時に、下主、件(くだん)の割れたる鉢を持ち出で、ありのままに言ひてけり。
亭主、案にかはり、機嫌1)を直し、「珍々重々(ちんちんちようちよう)なるかな。今年、わが商ひは、はちわり2)あらうずよ」と祝うたり。
翻刻
一 物いはひする商人ありてはつ春の朝毎/n8-65r
こふかちぐりなどくはしをいれてすはる そめつけのはちあり宵よりつまのとりい たし下主に渡しきれいにすすきてあけよと いふになにとかしけむとりおとしてうちは りぬねうはうきもをつふしあへりあけぬ れはいつものちやのこいつるやと亭主まて ともさらにいてすそのまま気しよくをそこ なひねうばうをしかるときにけすくたんの われたる鉢をもちいてありのままにいひて/n8-65l
けりていしゆあんにかはりさけんをなをし 珎々重々なるかなことし我あきなひは鉢わり あらふすよといわふたり/n8-66r
text/sesuisho/n_sesuisho8-163.txt · 最終更新: 2023/05/04 15:03 by Satoshi Nakagawa