text:sesuisho:n_sesuisho8-052
醒睡笑 巻8 頓作
52 雪の日外より人来たり家に入る・・・
校訂本文
雪の日、外より人来たり家に入る。見ればことのほか暗し。「あらくらや、くらや」と言ふ間に、鉈(なた)が足に当たれり。「内々欲しかりつるに」と思ひ、取りて懐(ふところ)に入れぬ。
座敷に直りゐたれば、ひたもの明かくなるまま、「さても恥づかしや、人の見つらん」と、悲しければ、とり出だすべきやうなくて、案じわづらふところへ、また、人来たりぬ。さきのごとく「あら、くらくら」と言ふ時、すなはち取り出だし、「これこれ、鉈をさへ懐に入るれば、明るうなるにすんだ」とて、取り出だし渡せり。
翻刻
一 雪の日そとより人来り家に入みれは事の 外くらしあらくらやくらやといふ間に鉈か足に あたれり内々ほしかりつるにとおもひとりて懐 にいれぬ座敷になをりゐたれはひた物あ かくなるままさても恥かしや人の見つらんとかな しければとり出すへき様なくて案しわつらふ 処へ又人来りぬさきのことくあらくらくらと いふ時すなはち取出し是々なたをさへ懐に/n8-22l
いるれはあかるふなるにすんたとてとり 出しわたせり/n8-23r
text/sesuisho/n_sesuisho8-052.txt · 最終更新: 2022/11/01 14:39 by Satoshi Nakagawa