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text:sesuisho:n_sesuisho8-039

醒睡笑 巻8 頓作

39 御意に入りて常に参りつけたる人の関白殿へ出でんとする時・・・

校訂本文

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御意(ぎよい)に入りて、常に参りつけたる人の、関白殿1)へ出でんとする時、小姓衆、「今ほど聚楽の法度あり。知らずや。『焼くる』と『死ぬる』と、この二字申すこと禁制なり。なんぢたくみ、殿に二字を言はするやうにせよ」。「心得たり」と、すなはち出づる。

案のごとく、「何事やある」と御尋ねあり。「その儀にして候ふ。三条の辻に面白き物を棚に出だして置き参らせた」。「何ぞや」。「楠(くすのき)にてつかまつりたる風炉と釜とを見てござある」と。「うつけを言ふやつかな。木釜をたかば、焼けて役に立つべきか」。「それ、はあ、御法度が破(や)れた」。

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一 御意に入てつねにまいりつけたる人の関白殿
  へいてんとする時小性衆今程聚楽の法度
  ありしらすややくると死ぬると此二字申
  事禁制也汝たくみ殿に二字をいはする
  様にせよ心得たりとすなはち出るあんのことく
  何事やあると御尋あり其儀にして候三条の辻
  に面白物を棚に出して置参らせた何ぞや/n8-17l
  楠にて仕たる風炉と釜とを見て御座あるとう
  つけをいふやつかな木釜をたかばやけて役に
  たつへきかそれはあ御法度かやれた/n8-18r
1)
豊臣秀吉か秀次
text/sesuisho/n_sesuisho8-039.txt · 最終更新: 2022/10/23 13:41 by Satoshi Nakagawa