text:sesuisho:n_sesuisho8-040
醒睡笑 巻8 頓作
40 大坂にて鳥屋町を逸興なる男鴫といふ鳥買はう・・・
校訂本文
大坂にて鳥屋町を逸興(いつきよう)なる男、「鴫(しぎ)といふ鳥買はう、鴫といふ鳥買はう」と言うて歩(あり)く。「珍しき買手や」と思ひ、呼び寄せ、雲雀(ひばり)を、「これこそ鴫や」とて売りぬ。
山家(やまが)に帰り見すれば、「なかなか鴫にはあらず。うつけたり」と叱られ、またはるばる大坂に持ち行き、「戻さん」と言ふ時、鳥売、「それは物を知らぬ人の申すことに。鴫は一色ならず、二色ならず、百しき1)とて、百色あるぞ」と。まことに思ひ、また取りて行きたり。
翻刻
一 大坂(さか)にて鳥屋町を逸興なる男鴫といふ鳥 かはふ鴫といふ鳥かはふといふてありく珍敷買 てやとおもひよひよせ雲雀をこれこそ鴫や とて売ぬ山家に帰り見すれば中々鴫には あらすうつけたりとしかられ又はるはる大坂に もちゆきもとさんといふ時鳥売それは物を/n8-18r
しらぬ人の申事に鴫は一いろならす二色ならす 百しきとて百色あるそと実におもひ又 取て行たり/n8-18l
1)
百色・百敷。百敷は内裏のこと。
text/sesuisho/n_sesuisho8-040.txt · 最終更新: 2022/10/23 15:13 by Satoshi Nakagawa