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text:sesuisho:n_sesuisho7-094

醒睡笑 巻7 謡

36 銭を貸したる人の方へ年の暮れに使をつかはし乞ひければ・・・

校訂本文

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銭を貸したる人の方へ、年の暮れに使をつかはし乞ひければ、返事に、「三年・四年利分(りぶん)をなしたり。もはやそなたのものをば負はぬ」と言ふ。貸主、大きに腹立し、対顔して、「本利ともにすませ」と。「いや、利分ばかりにてすまされよ。釈迦の時代から、本利ともになすことはない」。「それは何としたる存分ぞや」。「されば熊野(ゆや)1)に、『仏ももとは捨てし世の』と作り、本(もと)なさぬは2)、仏さへ許されたは、さて」。

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一 銭をかしたる人の方へ年のくれに使をつかはし
  こひければ返事に三年四年利分(りぶん)をなし
  たりもはやそなたの物をばおはぬと
  いふかしぬし大に腹立し対顔して本利
  共にすませといや利分斗にてすまされ
  よ尺迦(しやか)の時代から本利ともになす事は
  ないそれはなにとしたる存分そやされは/n7-48r
  ゆやに仏ももとはすてし世のと作りも
  となさねば仏さへゆるされたはさて/n7-48l
1)
謡曲「熊野」
2)
「なさぬは」は底本「なさねば」。諸本により訂正。
text/sesuisho/n_sesuisho7-094.txt · 最終更新: 2022/09/03 21:23 by Satoshi Nakagawa