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text:sesuisho:n_sesuisho7-056

醒睡笑 巻7 廃忘

13 京辺土にてある東堂の細工に蟹醢をするとて・・・

校訂本文

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京辺土(へんど)にて、ある東堂の細工に、蟹醢(かにびしほ)1)をするとて、塩一・二升を用意し、ふりかけゐらるるところへ、ふと檀那来たれり。

「さてもよくぞおはしましたる。内々、『人のはぐくみの色を見せ参らせたや』とこそ思ひ候ひつれ2)。そのゆゑは、愚僧が親切の檀那、尼崎にあり。某(それがし)使ふほどは塩を続けてくれんとの契約なり。されども、道のほど遠ければ、人馬の歩(あり)きは造作(ざうさ)なる条、いつも蟹に負ふせて送らるる。これ御覧ぜよ」とぞ申されける。

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一 京辺土にてある東堂(とうだう)の細工(さいく)に蟹ひしほ
  をするとて塩一二舛を用意(ようい)しふりかけ/n7-32l
  ゐらるる処へふと檀那(だんな)来れりさても
  よくそおはしましたる内々人のはぐくみ
  のいろを見せ参らせたやとこそおもひ候へ
  れ其故は愚僧(ぐそう)がしんせつのたんな尼崎(あまかざき)に
  有某(それがし)つかふ程はしほをつつけてくれんとの
  けいやく也されども道の程遠けれは人馬の
  ありきはさうさなる条いつも蟹におふせて
  送らるる是御覧せよとぞ申されける/n7-33r
1)
「蟹」は底本虫へんに斛。蟹醢は蟹の塩辛のこと。
2)
「候ひつれ」は底本「候へれ」。諸本により訂正。
text/sesuisho/n_sesuisho7-056.txt · 最終更新: 2022/08/01 16:34 by Satoshi Nakagawa