text:sesuisho:n_sesuisho7-035
醒睡笑 巻7 似合うたのぞみ
4 武州岩槻の山下に毎朝鉢を開く者その類二三人寄り合ひ・・・
校訂本文
武州1)岩槻2)の山下に、毎朝鉢を開く者3)、その類(たぐひ)二・三人寄り合ひ、さまざま物語しける中に、一人が言ひけるは、「今生(こんじやう)の望み、ただ当城の殿になりたいまでよ。誰(た)が館(やかた)4)とも、何の宗旨とも言はせず、おつこみおつこみ鉢が開きたい」と。
鉢を開くといふついでに。一路沙門5)、和泉にて鉢に出でられし。心ある人、内より、
何をがな参らせばやと思へども達磨宗には一物もなし
一路
本よりも賜はらざるを得たるこそ本来空の妙理なりけれ
翻刻
一 武州(ぶしう)岩筑(いはつき)の山下に毎朝鉢をひらく者其 類(たぐひ)二三人寄合(よりあい)様々物かたりしける中にひと りかいひけるは今生(こんじやう)の望(のぞみ)唯(たた)当城(たうじやう)の殿に なりたいまてよ誰が屋形(やかた)ともなにの宗旨(しうし)とも/n7-21l
いはせすおつこみおつこみ鉢かひらきたいと鉢を ひらくといふ次てに一路沙門(しやもん)和泉にて鉢 にいてられし心ある人内より なにをかなまいらせはやとおもへとも 達磨宗には一物もなし 一路 本よりもたまはらさるを得たるこそ 本来(らい)空(くう)の妙理なりけれ/n7-22r
text/sesuisho/n_sesuisho7-035.txt · 最終更新: 2022/07/17 12:05 by Satoshi Nakagawa