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醒睡笑 巻7 いひ損ひはなほらぬ
10 移徙の祝儀につかはす使を呼び主の教へけるは・・・
校訂本文
移徙(わたまし)の祝儀につかはす使を呼び、主(しう)の教へけるは、「かまへて常のところに行くとは違ふぞ。一言にても麁末(そまつ)なること申すべからず」とあり。「かしこまりて候ふ」とて行く。
主人、献々(こんこん)をくむ。されども、つひに瘖(おし)の寄り合ひたるごとくなれば、主(あるじ)すまぬことに思ひ、「貴所はいかなる子細により、無言の仕合せぞや。わめきざめくこそめでたけれ」と言ふ時、「さればとよ。さきからものが言ひたうて、胸が焼くる1)ほどあつたれど」。
翻刻
一 わたましの祝義につかはす使をよび主(しう)のを しへけるはかまへてつねの処に行(ゆく)とはちがふ/n7-17r
ぞ一言にても麁末なる事申へからすと あり畏て候とて行主人献々(こんこん)をくむされ どもつゐに瘖(おし)のよりあひたるごとくなれは あるじすまぬ事におもひ貴所はいかなる子細(しさゐ) により無言の仕合ぞやわめきさめくこそ 目出けれといふ時されはとよさきから物がいひ たふてむねかやくるほとあつたれど/n7-17l
1)
棟が焼くるに通じる。
text/sesuisho/n_sesuisho7-029.txt · 最終更新: 2022/06/28 12:04 by Satoshi Nakagawa