text:sesuisho:n_sesuisho7-021
醒睡笑 巻7 いひ損ひはなほらぬ
2 惣別茄子の枯るるをば百姓みなまふといふなり・・・
校訂本文
惣別(そうべつ)茄子(なすび)の枯るるをば、百姓みな、「まふ」といふなり。和泉にてのことなるに、道のほとりに茄子を植うる者あり。下手らしき舞々(まひまひ)の通りあはせ、見れば大きなる徳利1)に盃を添へてあり。ちとこれをなん望みにや思ひけん、畠(はたけ)へ立ち寄り、「さらば一節(ひとふし)舞はん」と言ふ。百姓、「門出(かどいで)悪しし」と大きに腹立(ふくりう)しけれど、とかく言ひ寄り、酒をのみ飲ませけるが、立ちて行きざまに、「さきの腹立は、互ひに根も葉もおりない」と。
花塗りをした2)。
翻刻
一 惣別茄子(なすび)のかるるをば百姓みなまふといふ也 和泉にての事なるに道のほとりに茄子を うふる者ありへたらしき舞々(まいまい)のとをり あはせ見れば大なる土工李(とくり)に盃(さかつき)をそへ てありちとこれをなん望にやおもひけん畠(はたけ) へたちよりさらは一ふしまはんといふ百姓かど いであししと大に腹立(ふくりう)しけれどとかくいひより/n7-14r
酒をのみのませけるが立て行さまにさきの 腹立はたがひにねもはもおりないと はなぬりをした/n7-14l
text/sesuisho/n_sesuisho7-021.txt · 最終更新: 2022/06/21 16:12 by Satoshi Nakagawa