text:sesuisho:n_sesuisho7-020
醒睡笑 巻7 いひ損ひはなほらぬ
1 松永霜台和州信貴の城におはせし時は菓子をすゑて出だすに・・・
校訂本文
松永霜台(そうだい)1)、和州2)信貴の城におはせし時は、菓子をすゑて出だすに、染付にても南蛮物にてもあれ、「一廉(ひとかど)の鉢なければ、座敷の興少なし」と、もてはやすことあり。
名ある侍のもとに霜台を請用し、珍しき鉢を出だせり。大いに感じ讃められけるなかば、相伴の人、「今日の振舞ひは、ただ亭主の鉢びらきにて候ふ」と申しけるを、「何とやらん、言葉の縁悪しし」と言ふに、肝をつぶし、「されば、これの鉢をおひらきあるで候ふ」と。
翻刻
いひ損はなをなぬ 一 松永霜臺(そうたい)和州信貴の城におはせし時は 菓子をすへて出すに染付にても南蛮(なんばん)物 にてもあれ一廉(かと)の鉢なければ座敷の興(けう)す くなしともてはやす事あり名ある侍 のもとに霜臺を請用し珍敷鉢を出せり 大に感(かん)しほめられけるなかば相伴の人今 日の振舞はたた亭主の鉢ひらきにて候 と申けるをなにとやらん言葉(ことば)のえんあし/n7-13l
しといふに肝をつふしされはこれの鉢をお ひらきあるて候と/n7-14r
text/sesuisho/n_sesuisho7-020.txt · 最終更新: 2022/06/21 11:57 by Satoshi Nakagawa