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月次(つきなみ)の会あり。宗長のおはしけるその席の末座(ばつざ)に、弟子たる人、句を出だしぬ。指合(さしあひ)なくとまりたるを、「さては今日の句、よくよく出来けるよ」と得心し、宗長に向かつて手をおさへ、「何と聞こえ参らせたか」と申したるに、「なかなか聞こえた」とあり。ほどへて、また一句出だし、その句もとまりたるまま、ちと慢じ、また手をつき、「何と聞こえ参らせたか」といふ時に、宗長、「聞こえた。そこからここまでは聞こえた」と。

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一　月次の会あり宗長のおはしける其席の
　　末座に弟子たる人句を出しぬさしあひなく
　　とまりたるをさてはけふの句よくよく出来けるよ
　　と得心し宗長にむかつて手ををさへなにと聞え
　　参らせたかと申たるに中々聞えたとあり程経て
　　又一句出し其句もとまりたるままちと慢し
　　又手をつきなにと聞え参らせたかといふ時に
　　宗長きこえたそこから爰まてはきこえたと／n6-47r