text:sesuisho:n_sesuisho6-054
目次
醒睡笑 巻6 若道知らず
2 紀州根来の岩室に・・・
校訂本文
紀州根来1)の岩室に
梅千代とかやいふ若衆
かたちを籬(ませ)の内に隠せど
その名は外にもれやすく
そはのかけ橋及ばぬも
思ひを志賀の浦浪に
寄せぬ人こそなかりけれ
かかる折しも情なや
花に嵐の添ふもげに
これかや梅千代病(やまひ)づき
一まづ里に下りしを
涙とともに問ふ人あれば
かたかしらなる親出でて
言ひぬる時宜のうたてさよ
「これのむすこはこえだし2)に
腫れ物あれど大事ない」
御親父の時宜に恋がさめた3)。
翻刻
一 紀州根来の岩室に梅千代とかやいふ若衆 かたちをませの内にかくせと 其名は外に もれやすく そはのかけはしをよはぬも 思ひ を志賀の浦浪に よせぬ人こそなかりけれ かかる折しも情なや 花に嵐のそふもけに これかや梅千代やまひづき 一まづ里にくたりしを 涙とともにとふ人あれは かたかしらなる親出て いひぬる時宜のうたてさよ これのむすこはこえ/n6-26l
だしに はれ物あれと大事ない 御親父の時宜に恋かさめた/n6-27r
text/sesuisho/n_sesuisho6-054.txt · 最終更新: 2022/05/03 12:22 by Satoshi Nakagawa