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下京に、孝行風呂とてありし。「この名は何の子細に呼ぶぞや」と不審しけり。「さることあり。『ふかう¹⁾に及ばぬ』といふことなり」と語れば、おもしろきことに思ひゐたりしが、さるところにて、「この風呂のいはれいかが」など言ふを聞きて、「それこそ知りたる者がない。『拭くに及ばぬ』」と申されし。

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一　下京にかうかう風呂とてありし此名はなに
　　の子細によふそやと不審(ふしん)しけりさる事有
　　ふかうにおよばぬといふ事なりとかたれは
　　おもしろき事におもひゐたりしかさる処
　　にてこの風呂のいはれいかかなどいふを聞
　　てそれこそしりたる者かないふくにおよば
　　ぬと申されし／n5-69r