text:sesuisho:n_sesuisho5-071
醒睡笑 巻5 人はそだち
4 人里遠き寺あり手習ふとて少人集まりゐる・・・
校訂本文
人里遠き寺あり。手習ふとて少人集まりゐる。ころは秋の始め、たそがれ時の寂しきに、雁金(かりがね)の渡る声聞こゆ。走り出で数へ見れば、数六つぞありける。
歌詠む人の子息、
空よりもむつかり声1)の聞こゆるは雲の上にも歎きもやある
その座の人々、感じあへり。
また明けの昼、雁五つ連れて渡る。土民の子、昨日讃められし方をうらやみ思ひ、
空よりもごきかり声2)の聞こゆるは雲の上にも汁事(しるごと)やある
翻刻
一 人里とをき寺あり手習(なら)ふとて少人あつま りゐる比は秋の始たそかれ時のさびしきに 雁金(かりかね)のわたる声きこゆはしり出かぞへみれは かず六つそありける哥よむ人の子息 空よりもむつかり声の聞ゆるは 雲の上にもなけきもやある 其座の人々感(かん)じあへり又あけのひる雁 五つつれてわたる土民の子昨日ほめられし/n5-54r
方をうらやみおもひ 空よりもこきかり声の聞ゆるは 雲の上にも汁事やある/n5-54l
text/sesuisho/n_sesuisho5-071.txt · 最終更新: 2022/03/17 18:54 by Satoshi Nakagawa