text:sesuisho:n_sesuisho5-056
醒睡笑 巻5 上戸
14 薬さへ過ぐれば毒となるいはれありまして酒の性は熱たり・・・
校訂本文
「薬さへ過ぐれば毒となるいはれあり。まして、酒の性(しやう)は熱たり。そちのやうに大盃をもつて数をつくさば、いかでか脾胃(ひい)の損ぜぬことあらん。きつと誓文をし、盃を定めよ」と教訓すれば、「さらば、ひやしる椀で三盃づつ飲まん」と誓せしが、三日も過ぎざるに、飯後(はんご)の酒出づる。「私には冷(ひや)をくだされよ」と所望す。すなはち冷酒(ひやざけ)出だしければ、汁の椀にて受け受け三盃続けて飲みたり。
興覚め顔し、人々悪しく言ふに、「われは神文少しもそむかず。冷と汁との句を切り、『冷、汁椀で三盃飲めう』と申したは」。
翻刻
一 薬さへすぐれは毒となるいはれありまして 酒の性(しやう)は熱(ねつ)たりそちのやうに大盃をもつ て数をつくさはいかでか脾胃(ひい)のそんせぬ事あらん 急度誓文(せいもん)をし盃をさだめよと教訓(きやうくん)すれ ばさらはひやしる椀て三盃つつのまんと誓せ しが三日も過さるに飯後の酒出る私には ひやをくたされよと所望す則冷(ひや)酒出しけれは/n5-44l
汁の椀にてうけうけ三盃つつけてのみたり 興さめかほし人々あしくいふに我れは神文 すこしもそむかずひやと汁との句を切ひや しるわんで三盃のめふと申たは/n5-45r
text/sesuisho/n_sesuisho5-056.txt · 最終更新: 2022/03/08 22:12 by Satoshi Nakagawa