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醒睡笑 巻5 婲心
13 町屋の棚に面をかけて置きたり・・・
校訂本文
町屋の棚に面をかけて置きたり。望みの人ありて立ち寄り、「それなる上臈面(じやうらふめん)を見たき」よし、乞ひければ、暖簾(のうれん)の内より、いかにも色黒くたくましき男の、手に持ちさし出しざまに、「代は五百でおぢやらします」と言ひけり。
「いや、これはおどけ者よ」と思ひ、「それに候ふ鬼の面を見たい」と乞ふ。またさし出しざまに、おほきに頬をふくらかし、恐しげなる声をして、「八百」とぞ言ひたりける。
その物々に心をなしたる、やさしき人の作分にやあらん。
翻刻
一 町屋の棚に面(めん)をかけてをきたりのそみの人 有て立よりそれなる上臈面を見たきよし こひければのうれんの内よりいかにも色くろ くたくましき男の手にもちさし出し さまに代は五百でおじやらしますといひけり いやこれはおどけ者よとおもひそれに候鬼の 面を見たいとこふ又さし出しさまにおほき/n5-9r
にほうをふくらかしおそろしけなる声を して八百とそいひたりけるその物々に 心をなしたるやさしき人の作分にやあらん/n5-9l
text/sesuisho/n_sesuisho5-013.txt · 最終更新: 2022/02/20 22:33 by Satoshi Nakagawa