text:sesuisho:n_sesuisho5-014
醒睡笑 巻5 婲心
14 芸州に大場といふ侍あり・・・
校訂本文
芸州に大場といふ侍あり。兄弟の中いかがの子細にや、庶子(そし)家をつぎて惣領は筑紫に行き、牢人(ろうにん)の後、太閤御所、薩摩御陣立(さつまぢんだち)あり。庶子のなにがしも御供し、宿札(やどふだ)を持ちて行く折節、兄の家とも知らず打ちたり。宿取りを主人うかがひ見れば、件(くだん)の弟(おとと)なりし。さすが昔のゆかしくて、
おほば1)をば茶にさへ嫌ふものなるに何の縁とて宿を借るらん
庶子よりの返歌
おほばをば茶にさへ嫌ふものなれど心砕けば別儀あらじな
翻刻
一 藝州(げいしう)に大場(おほば)といふ侍あり兄弟の中如何(いかか)の 子細にや庶子(そし)家をつきて惣領(そうりやう)は筑紫に行 牢(ろう)人の後太閤御所薩摩御陣立(ぢんたち)あり庶子の なにかしも御供し宿札をもちて行折節兄の 家ともしらず打たり宿とりを主人伺みれば 件(くたん)の弟(おとと)なりしさすか昔の床しくて/n5-9l
大ばをは茶にさへきらふ物なるに なにのえんとて宿をかるらん 庶子よりの返哥 大ばをは茶にさへきらふ物なれと 心くたけは別義あらしな/n5-10r
1)
大葉・大場
text/sesuisho/n_sesuisho5-014.txt · 最終更新: 2022/02/21 18:27 by Satoshi Nakagawa