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醒睡笑 巻4 いやな批判
11 人の通ひもまれなる山中にて座頭の琵琶を負ひ・・・
校訂本文
人の通ひもまれなる山中にて、座頭の琵琶を負ひ、岨(そは)の懸路(かけぢ)をつたふあり。薪を拾ひゐたる賤(しづ)の男(を)、これを見付け、むかうの谷に友達のゐけるを高声(かうしやう)に呼び、「やいやい、あの杖突き虫1)の出でたを見よ。あら珍しや。つひに一期に見ぬ虫や」と呼ばはる時、「この十年ばかり先に、何の虫がこの道へ出でてあつたが、その年蕎麦が良かつた。今年もさては蕎麦が良からうず」と。
翻刻
一 人のかよひもまれなる山中にて座頭(さとう)の琵琶(ひは) を負岨のかけぢをつたふあり薪をひろひ ゐたる賤(しづ)の男これを見付むかふの谷に友達 のゐけるを高声(かうしやう)によひやいやいあの杖(つゑ)つき むしの出たを見よあらめつらしやつゐに一期(こ) にみぬ虫やとよばはる時此十年はかり先(さき)に 何の虫か此道へ出てあつたがその年そばが よかつたことしもさてはそはかよかろふずと/n4-32l
1)
シャクトリムシ
text/sesuisho/n_sesuisho4-038.txt · 最終更新: 2021/11/29 00:24 by Satoshi Nakagawa