text:sesuisho:n_sesuisho4-012
醒睡笑 巻4 聞こえた批判
12 綾小路にて板返しする日家主の女房屋根に上がりしが・・・
校訂本文
綾小路にて、板返しする日、家主の女房、屋根に上がりしが、いかが踏みはづして落ちたり。隣りの女房、その下にゐあはせ、頭(あたま)の上へころびかかれば、首の骨ちがひて死にけり。
その女の夫(おつと)、理不尽に、「わざと殺さんとて落ちたるものなり。是非こらへまじき」と言ひ、所司代へ出づる。伊賀守殿1)、「余儀(よぎ)なき存分なるまま、幸ひ手本あり。右家主(いへぬし)の妻を、わが女のゐたるところに置きて、そちの屋根に上がり、最前のごとく落ちかかりて、憎しと思ふ相手の女を殺せ」とあれば、言葉もなく帰りつることよ。
翻刻
一 綾(あやの)小路にて板かへしする日家主の女房屋 ねにあかりしがいかか踏(ふみ)はつして落たり となりの女房其下にゐあはせあたまの 上へころびかかればくびの骨(ほね)ちがひてしにけり 其女の夫(おつと)理不尽(りふしん)に態(わさと)ころさんとておち たる物也是非こらへましきといひ所司代へ/n4-15l
出る伊賀守殿余儀なき存分なるまま幸 手本あり右家ぬしの妻を我かをんなの居 たる処に置てそちのやねにあかり最 前のことく落かかりてにくしとおもふあい てのおんなをころせとあれはこと葉もなく 帰りつる事よ/n4-16r
1)
板倉勝重
text/sesuisho/n_sesuisho4-012.txt · 最終更新: 2021/11/17 22:33 by Satoshi Nakagawa