text:sesuisho:n_sesuisho3-101
醒睡笑 巻3 清僧
2 禅に一路とて得法の僧ありし・・・
校訂本文
禅に一路(いちろ)1)とて、得法(とくほふ)の僧ありし。和泉の国大鳥の辺りに草庵を結び、友もなく星霜を送らるる。財宝とては、手どりとかやいふ、小さき釜に口のあるを所持し、朝夕の煙(けぶり)を立てられき。
ある時たはぶれて、
手どりめよおのが小口(こぐち)のさし出でて雑炊煮たと人に語るな
身を隠す庵(いほり)の軒の朽ちぬれば生きても苔の下にこそあれ
月は見ん月には見えじながらへて憂き世をめぐる影も恥かし
翻刻
一 禅に一路(いちろ)とて得法の僧ありし和泉の国/n3-48r
大鳥の辺に草庵をむすひ友もなく星(せい) 霜(さう)をおくらるる財宝とては手どりとかや いふちいさき釜に口のあるを所持(しよぢ)し朝 夕の煙(けふり)をたてられきある時たはふれて 手どりめよをのが小口のさし出て 増水(ぞうすい)にたと人にかたるな 身をかくす庵の軒の朽ぬれば いきても苔の下にこそあれ 月は見ん月には見えしなからへて/n3-48l
うきよをめくる影もはつかし/n3-49r
1)
一路居士
text/sesuisho/n_sesuisho3-101.txt · 最終更新: 2021/11/05 23:14 by Satoshi Nakagawa