text:sesuisho:n_sesuisho3-087
醒睡笑 巻3 自堕落
11 都の寺に檀那朝とく参り本尊を拝し・・・
校訂本文
都の寺に、檀那、朝とく参り、本尊を拝し、茶堂(さだう)の傍らに候ひて、数珠を繰り、仏名(ぶつみやう)を念じゐけるが、炉(ろ)にかけたる釜の湯おびたたしく煮えあがりて、蓋(ふた)を叩く。釜と蓋との間に、何やらん見ゆる物あり。蓋を取りたれば蛸(たこ)なり。「これは何ぞ、蛸ではなきかや」と言ふ時、坊主の返事、「さることもあるべし。夕べ蛸薬師1)の水を汲み寄せて、茶の湯をしかけさせたほどに」と。
翻刻
一 都の寺に檀那(だんな)朝とく参り本尊を拝し 茶堂(さたう)の傍(かたはら)に候て数珠(じゆす)をくり仏名を念(ねん)し/n3-40l
ゐけるが炉(ろ)にかけたる釜(かま)の湯おびたたし く煮(にゑ)あがりて蓋(ふた)をたたく釜(かま)とふたとの あいたになにやらん見ゆる物ありふたを とりたれば蛸(たこ)なりこれはなにぞ蛸(たこ)では なきかやといふ時坊主の返事さる事も 有へしゆふ部(へ)蛸薬師(たこやくし)の水をくみよせて 茶の湯をしかけさせたほどにと/n3-41r
1)
永福寺
text/sesuisho/n_sesuisho3-087.txt · 最終更新: 2021/11/03 16:35 by Satoshi Nakagawa