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醒睡笑 巻3 自堕落
7 窮貧の沙門にて年もまた至極せるが・・・
校訂本文
窮貧(きゆうひん)の沙門にて、年もまた至極(しごく)せるが、しかと給仕の人もなければ、自身白き手ぬぐひにて頭を包み、魚の店にのぞめり。
折節、何も魚の類(たぐひ)なく、ただ鱏(えひ)1)といふ物、大と小とぞありける。亭主、「お出であれ」。「それに候ふ鳥板(てふはん)なりの魚は、いくいくらにてあるぞ」。「小は安く大は高(たか)なる」よし。「合点(がつてん)で候ふ。小をばその方の言ふごとく買はうず。大なるをば寄進せられよ」と。
翻刻
一 窮貧(きうひん)の沙門にて年もまた至極せるが しかと給仕の人もなけれは自身しろき 手ぬくひにて頭をつつみ魚の店にのぞめり 折節なにも魚の類なく唯〓(ゑひ)といふ物大と 小とぞありける亭主お出あれそれに候てふ はんなりの魚はいくいくらにてあるそ小は/n3-39r
やすく大は高なるよし合点(がつてん)て候小をば其方の いふことくかはふす大なるをば寄進(きしん)せら れよと/n3-39l
1)
「鱏」は底本、魚偏に遣。底本の読み仮名「ゑひ」により改めた。
text/sesuisho/n_sesuisho3-083.txt · 最終更新: 2021/10/28 22:53 by Satoshi Nakagawa