text:sesuisho:n_sesuisho3-084
醒睡笑 巻3 自堕落
8 鱛を反古に包み焼き飯にそへて食せんとする時・・・
校訂本文
鱛(えそ)1)を反古(ほうぐ)に包み焼き、飯にそへて食せんとする時、檀那来たれり。坊主、料簡(れうけん)なく膳を持ちて立ち、酒を出だし振舞ひぬ。
その後、種々思案し、ある時、反古に大根を包み焼き振舞ひて、以前のにまぎらかさんとたくみ、件(くだん)の檀那を請待(しゃうだい)す。すなはち領掌(りやうじやう)し、時分に来たりしが、かの焼く体(てい)を見、座敷へ卒爾(そつじ)に入らずたたずむ。姥(うば)のあるが出でて言ふ、「いやあれは鱛ではおりない。大根じやに御座あれ」と。
この前のがいよいよ鱛にすうだ2)。
翻刻
一 鱛(ゑそ)を反古(ほうぐ)につつみやき飯にそへて食せんと する時旦那来れり坊主れうけんなく 膳をもちてたち酒を出しふるまいぬ其 後種々思案(しあん)しある時反古に大こんを つつみやきふるまひて以前のにまきらかさん とたくみ件のたんなを請待す即領(りやう)/n3-39l
掌(しやう)し時分に来りしかかのやく体を見 座敷へ卒爾(そつぢ)にいらすたたすむ姥(うば)のある が出ていふいやあれは鱛てはおりない大 根しやに御座あれと このまへのがいよいよ鱛にすふだ/n3-40r
text/sesuisho/n_sesuisho3-084.txt · 最終更新: 2021/11/03 16:37 by Satoshi Nakagawa