醒睡笑 巻3 不文字
<<PREV 『醒睡笑』TOP NEXT>>
底本、欠丁によりこの条の本文を欠く。他本により補った。
あなたこなた年頭の礼にありきけるさきざきにて、持参の扇を見ては、亭主のことばに、「五明(ごめい)1)はかたじけなや」と礼あるを聞き、さてはなににても、正月の持参はみな五明といふものやと合点し、その身はもとより塗師(ぬし)の上手なりければ、上々の茶桶(ちやおけ)を持参するに、たもとより取出し、奏者にむかひ、「これはわれらの五明で御座ある」と、持ち行くほどの処にていうたと。
安宅木(あたき)殿発句に、
ひらかぬは風のつぼみの扇かな
三光院殿2)、
秋風を腰にさしたる扇哉