text:sesuisho:n_sesuisho2-068
醒睡笑 巻2 躻(うつけ)
36 京にて盗人にあうたと興覚め顔し隣家の者集まり居たるところへ・・・
校訂本文
京にて、盗人にあうたと興覚め顔し、隣家(りんか)の者集まり居たるところへ、沼の藤六1)立ち寄り、「何が失せた」と問ふ。「鍋が見えぬ」と言ふに、「その取り手は、わが知りたる」と言ふ。「さてさて、聞きたや」と立ち出でけり。手招きして2)亭主を傍らに呼びのけ、「これは、ていど、公家がたの御内(みうち)の者が取つたぞ」。「何とて」。「昔から『鍋取公家(なべとりくげ)』とてあるほどに」と。
翻刻
一 京にて盗人にあふたと興さめかほし 隣家の者あつまり居たる処へ沼の藤六 立寄なにかうせたととふ鍋か見えぬといふに 其とりては我かしりたるといふ扨々聞たや と立出けりてまねさして亭主を傍に よびのけこれはていど公家かたの御内の者が とつたそなにとて昔からなへとり公家とて あるほとにと/n2-37r
text/sesuisho/n_sesuisho2-068.txt · 最終更新: 2022/08/27 16:13 by Satoshi Nakagawa