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醒睡笑 巻2 躻(うつけ)
37 七月風流を他郷にかくる・・・
校訂本文
七月、風流(ふりう)を他郷(たがう)にかくる。太郎左衛門といふ地下(ぢげ)の年寄なれば、かれがもとに集まりならしけり。狂言をする者、うつけたる土民に、「この烏帽子、風流にいる物ぞ。そちにわたす」と言ひ教へ、すなはち出居(でゐ)に置きぬ。
かくて、一両日も過ぎ、風流をかくる道々も、「烏帽子はあるか」と問ふ。「なかなかある」と答ふ。ただ今狂言に出でる時、烏帽子を乞ひければ、「太郎左衛門殿の出居にある」との返事は。
何も時の筈(はづ)にあはぬを、「太郎左衛門が出居の烏帽子」とぞ。1)
翻刻
一 七月風流を他郷にかくる太郎左衛門といふ 地下の年寄なれはかれかもとにあつまり ならしけり狂言をする者うつけたる土民 に此ゑほし風流に入物そそちにわた すといひをしへ即でゐにをきぬかくて一両 日も過風流をかくるみちみちもゑほしは あるかととふ中々あるとこたふ唯今 狂言に出る時ゑほしをこひけれは太郎 左衛門殿のでゐにあるとの返事は/n2-37l
(何も時の筈にあはぬを太郎左衛門かてゐのゑほしとぞ)/n2-38r
1)
この一文、底本改行数字下げて小書き。
text/sesuisho/n_sesuisho2-069.txt · 最終更新: 2021/08/16 15:10 by Satoshi Nakagawa