text:sesuisho:n_sesuisho2-034
醒睡笑 巻2 躻(うつけ)
2 美濃国立政寺の老僧に天瑞といふありき・・・
校訂本文
美濃国立政寺(りふしやうじ)の老僧に天瑞といふありき。はじめて京(みやこ)へ上らんと用意するを見、人指南するやう、「京はものの空値(そらね)を言ふ所ぞ。たとへば一銭に売るべきをば十銭と言ふ。その心得をしたがよい」と教へたり。「それ体(てい)のことをばぬかるまいぞ」とうけごひ、やうやう京に上り、祇園あたりにて、ちと望みにや思ひけん、餅を出だしたる棚に寄り、「この餅いくら」と問ふ、「一つ一文」と言ふ。天瑞ちくちく合点し、「一文とは空値じや。ただ食はう」。
夜から起て骨を折り、物のいりたる餅を、ただ参らせし子細はの。1)
翻刻
一 美濃国立政寺の老僧に天瑞といふありき 始て京へのほらんと用意するを見人しなん するやう京はもののそらねをいふ処そ たとへは一銭にうるへきをは十銭といふ 其心得をしたがよひとをしへたりそれてい の事をはぬかるまいそとうけごひやうやう 都にのほり祇園あたりにてちと望にや おもひけん餅を出したる棚により此餅 いくらととふ一つ一文といふ天瑞ちくちく/n2-22l
合点し一文とはそらねしやたたくはふ 夜るから起てほねをおり物のいりたるもちをたたまいら せし子細はの/n2-23r
1)
底本、この行小書き。
text/sesuisho/n_sesuisho2-034.txt · 最終更新: 2021/07/22 21:03 by Satoshi Nakagawa