text:sesuisho:n_sesuisho2-033
醒睡笑 巻2 躻(うつけ)
1 腑の抜けたる仁に海老をふるまひけるが・・・
校訂本文
腑の抜けたる仁に海老(えび)をふるまひけるが、赤きを見て、「これは生まれつきか、また朱にて塗りたる物か」と問ふ。「生得は色が青けれど、釜にて煎りて赤うなる」と言ふを合点(がてん)しゐけり。
ある侍の馬に乗りたる先へ、二間(にけん)まなか柄の朱鑓(しゆやり)二十本ばかり持ちたる中間(ちうげん)どもの走るを見、手を打つて、「さても世は広し。奇特なることや」と感ずる。「何をそなたは感ずるぞや」と問ひたれば、「そのことよ。今の鑓の柄の色は、火をたいて剥いたものぢやが、あれほど長い鍋がようあつたことや」と。
三月尽を 雄長老
春の日は長鑓なれど篠(ささ)の葉のひとよばかりになれるいしづき
翻刻
躻 一 腑のぬけたる仁にゑひをふるまひけるが赤を見て これはむまれつきか又朱にてぬりたる物 かととふ生得はいろがあをけれどかまにていり てあかふなるといふをかてんしゐけり ある侍の馬にのりたる先へ二間まなか柄の 朱鑓二十本斗もちたる中間とも のはしるを見手をうつてさても世はひろし きとくなる事やと感するなにをそなたは/n2-21l
かんするそやととひたれは其事よいまの鑓 の柄のいろは火をたいてむいたものぢやがあ れほとなかいなへかよふあつた事やと 三月尽を 雄長老 春の日は長鑓なれと篠の葉の ひと夜はかりになれる石つき 也足の判にささの葉鑓石つきになれる 三月の名残よくいひつつけられたり作に をひては吉光にこそ/n2-22r
text/sesuisho/n_sesuisho2-033.txt · 最終更新: 2021/07/21 16:47 by Satoshi Nakagawa