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醒睡笑 巻2 貴人の行跡
6 大名の世にすぐれて物見なる大鬚を持ち給へるあり・・・
校訂本文
大名の、世にすぐれて物見なる大鬚(おほひげ)を持ち給へるあり。あまりに鬚を慢(まん)じ、来るほどの者に、「わが鬚をば何と言ふぞ」と問ひ給ふ。「ただ世上に、殿様のお鬚を見る者ごとに唐物(からもの)と申さぬ者は御座ない」と申しあへり。大名、うち笑ませ給ひ、「げに誰もさ言ふよ」と鬚をなでなでして、「そこなる者こえよ」と招かせ給ひ、身近く寄せ、ささやきて、みづから鬚をとらへ、「弓矢八幡に、日本物ぢや」。
翻刻
一 大名の世にすぐれて物見なる大鬚を持 たまへるありあまりにひけをまんしくる ほとの者にわかひげをはなにといふぞととひ たまふただ世上に殿様のおひけを見る者 ことにから物と申さぬ者は御座ないと申 あへり大名うちゑませたまひけにたれも/n2-16r
さいふよとひけをなてなてしてそこなる者 こえよとまねかせたまひ身ちかくよせささ やきてみつからひけをとらへ弓矢八幡に 日本物ちや/n2-16l
text/sesuisho/n_sesuisho2-026.txt · 最終更新: 2021/07/18 22:18 by Satoshi Nakagawa