text:sesuisho:n_sesuisho1-143
醒睡笑 巻1 祝ひ過ぎるも異なもの
11 窮貧の者ありて五つ六つなる子に向ひ・・・
校訂本文
窮貧(きうひん)の者ありて、五つ六つなる子に向ひ、「明日(あす)元日の明方に、われわれ銭を手に持ち、目に当ててゐる時、『あれ、ととの、銭の中から目を見出(だ)いてござあるは』と言へ」と、ねんごろに教へおき、明けの日、銭を目に当て、息子が方を見れども、いとけなけれは忘れ果て、夢にだも思ひ出ださず。あまり堪へかね、指にて銭の真似をし、しきりに、「千代松よ、夕べから教へたることを言へ」と言ふ時、ちと形を思ひ出だして、「ととの穴の中から目見出いてや」と言うたる。その年、秘所(ひしよ)に行く。
翻刻
一 窮貧(きうひん)の者ありて五つ六つなる子にむかひ あす元日の明かたにわれわれ銭を手にもち目 にあててゐる時あれととの銭のなかからめを/n1-71l
見出いて御座あるはといへとねん比にをしへ をきあけの日銭を目にあてむすこかかたを見 れともいとけなけれはわすれはて夢にたも おもひ出さすあまりたへかねゆびにて銭のまね をししきりに千代松よゆふへからをしへたる事 をいへといふ時ちとかたちをおもひ出してととの あなのなかから目見たいてやといふたるそのとし 秘所に行/n1-72r
text/sesuisho/n_sesuisho1-143.txt · 最終更新: 2021/06/05 12:44 by Satoshi Nakagawa