ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:sesuisho:n_sesuisho1-136

醒睡笑 巻1 祝ひ過ぎるも異なもの

4 貧乏神とわりなき知音の者ありしが・・・

校訂本文

<<PREV 『醒睡笑』TOP NEXT>>

貧乏神とわりなき知音の者ありしが、ちと酒に酔(ゑ)ひて壁にもたれゐ、居眠(いゐねぶ)りしけるみぎり、肩から物が何とも知れず、どうと落ちけり。目を覚まし手を合はせ、「やれやれ嬉しいことや。この年月、肩にゐたる貧乏殿が、今日といふ今日落ちて、わが身を離れたよ」と合点せしが、誰言ふとも知れず、「あまり多く寄り合ひ、そちが居眠りする間、油びやしを踏むとてとりはづし、一人落ちにき。いまだ果てはないぞ」と言へり。何と心に祝うても笑止しや。

雄長老

  大きなる柿団扇(うちわ)がな二三本貧乏神をあふぎいなさん

也足1)の判、「柿団扇は貧神のつくといへば、二・三本にてあふぐこといかが。弥増(いやまし)に長ずべくや」。

<<PREV 『醒睡笑』TOP NEXT>>

翻刻

  貧乏(ひんほう)神とわりなき知音の者ありしが/n1-67l
  ちと酒にゑひて壁にもたれゐいねふりし
  けるみぎりかたから物がなにともしれすとう
  とおちけり目をさまし手をあはせやれやれ嬉
  しい事や此年月かたにゐたる貧ぼう殿かけふ
  といふけふおちて我身をはなれたよと合点せ
  しかたれいふともしれすあまりおほくより
  あひそちかいねふりするあひた油へうし
  をふむとてとりはづしひとりおちにきいま
  たはてはないぞといへりなにと心にいはふても/n1-68r
  せうしや 雄長老
   大なる柿うちはかな二三ほん
   ひんほう神をあふきいなさん
  也足の判柿団扇は貧神のつくといへは
  二三本にてあふく事いかか弥増(まし)に長すへ
  くや/n1-68l
1)
中院通勝
text/sesuisho/n_sesuisho1-136.txt · 最終更新: 2021/06/01 20:53 by Satoshi Nakagawa