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text:sesuisho:n_sesuisho1-134

醒睡笑 巻1 祝ひ過ぎるも異なもの

2 和泉国に寺門といふ在所あり・・・

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和泉国に寺門(てらかど)といふ在所あり。一人の百姓、名を好みて「貧乏(びんぼふ)」と付けたり。また一人は「夷(えびす)」と付く。

その其所の地頭、「元日に、もし貧乏礼始にや来たらん」と嫌がり、出でちがひて氏神へ参りしが、下向する道にて、夷に行き逢うたり。「夷はどちへ」。「そなたより出でて参る」と。「あら、気がかりや」と帰りゐたれば、また貧乏に行き逢へり。「貧乏はどちへ」。「殿へ参る」と申つることよ。

「忌(いむ)」といふ字は、おのが心と書きたり。

  貧乏の神も出雲に行くならば十月ばかり物は思はじ

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和泉国に寺門といふ在所あり一人の百
姓名をこのみてびんほうとつけたり又一人
は夷(ゑひす)とつく其所の地頭(ちとう)元日にもしひんほう
礼始にや来らんといやかり出ちかひて氏神へ
参りしが下向する道にて夷に行あふたり夷
はとちへそなたより出て参るとあら気かかり
やと帰りゐたれは又ひんほうに行逢へり
貧乏(ひんぼう)はとちへ殿へ参ると申つる事よ忌(いむ)と
いふ字はをのか心とかきたり/n1-66l
 ひんほうの神も出雲に行ならは
 十月はかり物は思はし/n1-67r
text/sesuisho/n_sesuisho1-134.txt · 最終更新: 2021/05/30 22:21 by Satoshi Nakagawa