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text:sesuisho:n_sesuisho1-042

醒睡笑 巻1 謂へば謂はるる物の由来

42 芋掘僧とはいかなる因縁ありていふ言葉ぞや・・・

校訂本文

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「芋掘僧(いもほりそう)」とは、いかなる因縁ありていふ言葉ぞや。

されば巨細(こさい)あり。たとへばいづれの仏地にても、一寺一院と相続するほどの所は、あるいは山林、あるいは田村(でんそん)、分々(ぶんぶん)に似合ひの資糧(しらう)あり。または、校割(かうかつ)の霊宝・財禄(ざいろく)あり。みなこれ三宝を供養し、法鐘(ほふしやう)を鳴らし、読誦を勤め、大乗の妙行第一議を解(げ)す。六趣四生(ろくしゆししやう)を導かんためなり。

しかるをば1)、四沙門の中、纔(わづ)か汚道比丘(をだうびく)にても、縁の勝劣を計り、師となり弟子となすべき法用なるを、末世のこの作法、悉(ことごと)くこれを背(そむ)き、法器をばさらに選ばず。ただ、わが姪(をひ)、わが従子(いとこ)など言って、その類親を尋ね出だし、寺院を他人に誤りても譲らざるを法とするまま、山の芋は蔓(つる)をただしてこそ掘るなれば、芋掘僧といふならん。

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一 芋堀僧(いもほりそう)とはいかなる因縁(ゐんえん)ありていふ詞ぞや/n1-22l
  されは巨細(こさい)ありたとへはいつれの仏地にて
  も一寺一院と相続するほとの所は或は
  山林(さんりん)或は田村(でんそん)分々(ぶんぶん)に似合(にあひ)の資糧(しらう)あり又は
  校割(こうかつ)の霊宝(れいほう)財禄(さいろく)ありみなこれ供養(くやうし)三
  宝(ほうを)鳴(ならし)法鐘(ほうしやうを)勤(つとめ)読誦(トクシユ)大乗(セウ)妙行(ミヤウキヤウ)解(ケス)第一議(キヲ)
  為(ため)導(みちひかん)六趣(シユ)四生(ヲ)也尓(なんち)をは四沙門の中纔(わつか)汚
  道(たう)比丘にても計(はかり)縁勝劣(ゑんせうれつを)師となり弟子と
  なすへき法用なるを末世のこの作法悉(ことことく)背(そむき)
  之(コレヲ)法器(ハウキ)をはさらにえらはす唯我か姪(ヲイ)我か/n1-23r
  従子(いとこ)なといつて其類親(るいしん)をたつねいたし
  寺院を他人に誤(あやまり)ても不譲を法とする儘(まま)
  山の芋(いも)はつるをたたしてこそほるなれは芋
  ほり僧といふならん/n1-23l
1)
「しかるをば」は底本「尓をは」で「尓」に「なんち」と読み仮名。文意により訂正。
text/sesuisho/n_sesuisho1-042.txt · 最終更新: 2021/04/18 12:02 by Satoshi Nakagawa