text:myotatsu:ka_myotatsu18
目次
18 ひしをひの春忠
校訂本文
また紀伊国に、名草の郡と云ふ所あり。ひしをひの春忠といひし者は、百部法華経を書き供養し奉らむと誓ひあり。その中(うち)に五十部は書き奉り、残りはいまだ書き供養し奉らず。その身死にて後、この誓ひによりて、摩訶陀国(まがだこく)の王となれり。すなはち王となる日、七日の中(うち)に残りの経は書き供養奉れり。ただし、法師ひ1)の一人の師の心を悩ませり。これによりて、その法師、軍(いくさ)を五百人おこして、常に討ちしのがむとす。しかれども、大きなる誓ひの力に、かの軍、すなはちこの王に随(したが)ひぬ。
翻刻
又紀伊国に名草の郡と云所ありひしをひの春忠といひし者は 百部法花経を書供養したてまつらむとちかひあり其中に五十 部は書たてまつり残はいまた書供養したてまつらす其身死にて後 此ちかひによりて摩訶陀国の王となれり即王となる日七日の中に 残の経は書供養たてまつれりたたしほうしひのひとりのみの心をなや ませり是によりて其法師いくさを五百人おこして常にうちし乃 かむとすしかれとも大なるちかひの力に彼いくさ即この王に随ひぬ/n2-55l・e2-52l
1)
「ひ」は衍字か。
text/myotatsu/ka_myotatsu18.txt · 最終更新: 2024/10/08 12:49 by Satoshi Nakagawa