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十訓抄 第八 諸事を堪忍すべき事

8の10 呂尚父が妻同じく家を住みわびて離れにけり・・・

校訂本文

呂尚父1)が妻、同じく2)家を住みわびて、離れにけり。

呂尚、文王の師となりて、いみじかりける時、かの妻、帰り来て、もとのごとくあらんことを乞ひ望む、その時に、呂尚父、桶一つを取り出でて、「これに水入れよ」と。言ふままに入れつ。「こぼせ」と言へば、こぼしけり。

さて、「もとのやうに返し入れよ」と言ふ時、妻、笑ひて、「土にこぼせる水、いかでか返し入れん」と言ふ。呂尚いはく、「なんぢ、われに縁尽きしこと、桶の水をこぼせるに同じ。今さら、いかでか帰り住まん」とぞ言ひける。

これら3)、もの妬みにはあらねども、貧しき世を忍びえず、心短きたぐひなり。

翻刻

九呂尚父カ妻、同ク家ヲスミワヒテ離ニケリ、呂尚文王
  ノ師トナリテイミシカリケル時彼妻カヘリ来テ、本
  ノコトクアランコトヲコヒノソム、其時ニ呂尚父桶一ヲ取/k15
  出テ、是ニ水入ヨト云ママニ入ツ、コホセトイヘハ、コホシケリ、
  サテ本ノヤウニカヘシ入ヨト云時、妻ワラヒテ土ニコホセ
  ル水争カ返入ント云、呂尚云汝我ニ縁ツキシ事桶
  ノ水ヲコホセルニ同シ、今更争カカヘリスマントソ云
  ケル、是等物ネタミニハアラネトモ、貧シキ世ヲ忍ヒ
  エス、心ミシカキ類也、
1)
呂尚・太公望
2)
前話参照。
3)
前話とこの話を指す。
text/jikkinsho/s_jikkinsho08-10.txt · 最終更新: 2016/02/23 13:55 by Satoshi Nakagawa
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