text:chomonju:s_chomonju043
古今著聞集 釈教第二
43 香隆寺僧正寛空は河内国の人なり・・・
校訂本文
香隆寺僧正寛空は河内国の人なり。神日律師の入室、寛平法皇1)、灌頂の御弟子なり。
天徳四年、炎旱(えんかん)の愁へありけるに、五月九日より、仁寿殿(じじゆでん)にて孔雀経法を修せられけるに、修中に雨くだらざりけり。結願の日になりて、巻数を奉る時、殿上に霊験なきよしを称して、執奏せざりけり。
僧正、そのよしを聞きて、法服を着し、香炉を捧げて、庭中に立ちて、深く観念の時、香炉の煙高く昇りて、大雨すなはち降る。
ただし、禁闕ばかり降りて郭外にはくだらざりけり。人怪しみとしけり。
翻刻
香隆寺僧正寛空は河内国人也神日律師入室寛 平法皇灌頂御弟子也天徳四年炎旱の愁ありける に五月九日より仁寿殿にて孔雀経法を修られけるに/s40l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/40
修中に雨くたらさりけり結願の日に成て巻数をたて まつるとき殿上に霊験なき由を称して執奏せ さりけり僧正其由をききて法服を著し香炉を捧 て庭中に立て深く観念の時香炉の煙たかく のほりて大雨即降但禁闕はかりふりて墎外に はくたらさりけり人あやしみとしけり/s41r
1)
宇多天皇
text/chomonju/s_chomonju043.txt · 最終更新: 2020/01/12 17:48 by Satoshi Nakagawa