text:tosanikki:se_tosa45
目次
2月6日 不明〜難波〜川尻
校訂本文
六日、澪標(みをつくし)のもとより出でて、難波(なには)に着きて、川尻1)に入る。みな人々、嫗(おむな)・翁(おきな)、額に手を当てて喜ぶこと二つなし。かの船酔(ふなゑ)ひの淡路の島の大御(おほいご)2)、「都近くなりぬ」といふを喜びて、船底より頭(かしら)をもたげて、かくぞ言へる、
いつしかといぶせかりつる難波潟(なにはがた)葦漕ぎそけて御船(みふね)来にけり
いと思ひのほかなる人の言へれば、人々あやしがる。これが中に、心地悩む船君3)、いたくめでて、「船酔(ゑ)ひし給(たう)べりし御顔(みかほ)には似ずもあるかな」と言ひける。
翻刻
六日みをつくしのもとよりいてて なにはにつきてかはしりにいる みなひとひとおむなおきなひたひ にてをあててよろこふことふた/kd-43r
つなしかのふなゑひのあはちのし まのおほいこみやこちかくなりぬと いふをよろこひてふなそこよりかし らをもたけてかくそいへる いつしかといふせかりつるなにはかた あしこきそけてみふねきにけ りいとおもひのほかなる人のいへれ はひとひとあやしかるこれかなかに ここちなやむふなきみいたくめてて ふなゑひしたうへりしみかほには/kd-43l
https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100421552/43?ln=ja
にすもあるかなといひける/kd-44r
text/tosanikki/se_tosa45.txt · 最終更新: 2023/10/09 22:13 by Satoshi Nakagawa