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醒睡笑 巻8 祝ひすました
8 商人の習ひにて正月は蔵の口に必ず鯛を懸くる例あり・・・
校訂本文
商人の習ひにて、正月は蔵の口に必ず鯛(たひ)を懸(か)くる例あり。これをなん伝へて、「懸小鯛(かけこだい)1)といふ。
ある者の蔵に、目の抜けたる鯛を懸けて置けり。亭主、元日の朝見付け、大いに機嫌をそこなふ時に、こざかしき中居の出でて、「今年、こなたのお仕合(しあは)せは、残ることなし。なにごともおめでたい」と祝うたり。
翻刻
一 商人のならひにて正月は蔵のくちにかならず 鯛をかくるれいありこれをなん伝へてかけて たいといふあるもののくらに目のぬけたる鯛を かけてをけり亭主元日の朝見つけ大に機嫌を/n8-64r
そこなふときにこさかしき中ゐの出てことし こなたのお仕合は残る事なし何事もおめて たいといはふたり/n8-64l
1)
「懸小鯛」は底本「かけてたい」。諸本により訂正。
text/sesuisho/n_sesuisho8-161.txt · 最終更新: 2023/05/03 12:26 by Satoshi Nakagawa