text:sesuisho:n_sesuisho8-115
醒睡笑 巻8 秀句
1 もと同学たりし人のもとへ広韻をちと貸し給へと言ひやりたれば・・・
校訂本文
もと同学たりし人のもとへ、「広韻(くわうゐん)をちと貸し給へ」と言ひやりたれば、「此方(こなた)にもいる」とて貸さず。後に会うたるに、「以前は異な物を貸されなんだ」と恨みければ「くわういん1)惜しむべし」とありけり。
主(ぬし)、遺恨を含み、かさねて先の惜しみての方へ、「明朝、斎(とき)を申さん」と言ひやりぬ。「必ず行かん」よし、返事なりき。
亭、暁より起きて、朝食を急ぎ用意し、内の者にも早々食らはせ、棚もとそのほか掃除をきれいにして置きたり。件の僧来たり。まてどもさらに飯をくるる音せず。「何とて膳は遅きぞ」。「『とき2)人を待たず』とあれば、はやとく過ぎたは」。
翻刻
しうく 一 もと同学たりし人のもとへ広韻をちとかし たまへといひやりたれば此方にもいるとてかさ す後にあふたるに已前はいな物をかされなんだ と恨けれは光陰惜へしとありけりぬし遺恨 をふくみかさねて先のおしみての方へ明朝斎 を申さんといひやりぬかならずゆかんよし返事 なりき亭暁より起て朝食をいそき用意し 内の者にも早々くらはせ棚もと其外掃除を/n8-43l
きれいにしてをきたり件の僧来りまてとも さらに飯をくるるをとせす何とて膳は遅そ とき人をまたすとあれははやとく過たは/n8-44r
text/sesuisho/n_sesuisho8-115.txt · 最終更新: 2022/12/18 10:26 by Satoshi Nakagawa