text:sesuisho:n_sesuisho8-056
醒睡笑 巻8 頓作
56 虎狼野干といふ四字をかけて置きたり・・・
校訂本文
「虎狼野干」といふ四字をかけて置きたり。亭主一向不文字なるを知りたる人、「これは何といふことぞ」。「それを知らぬほどのうつけがあらうか」。「とてもそちも知るまい。もし読みたらば、われ振舞ふべし。その方、え読まずはわれ今振舞へ」と、かけづくにしたり。亭、「もつとも」とうけこひぬ。
「さらば、虎は何と」。「とらよ」。「狼は」。「おほかみよ」。「野は」。「きつねよ」。「干は」。返答なし。亭、負けて振舞ひける。
「野干は」と一言に問うたるは問者の負けになるべきを、二字に分けたる智恵、作意あるかな。
翻刻
一 虎狼野干といふ四字をかけて置たり 亭主一向不文字なるをしりたる人是は何 といふ事ぞ其をしらぬほとのうつけがあらふか とてもそちもしるまいもしよみたらは我ふる まふへし其方えよますはわれ今ふるまへと かけつくにしたり亭尤とうけこひぬさらは 虎はなにととらよ狼はおおかみよ野はき つねよ干は返答なし亭まけてふるまひ ける野干はと一言にとふたるは問者のまけ/n8-24l
になるへきを二字にわけたる智恵作意有かな/n8-25r
text/sesuisho/n_sesuisho8-056.txt · 最終更新: 2022/11/05 12:03 by Satoshi Nakagawa